utteringUFOの日記

私とあなたの備忘録です

目、あるいは鏡

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こちらは、恋人が見る私です。

 

今日は恋人プロデュースのデートでした。当日もお互い日中の予定がある中で無理を言ってディナーをしましたが、今日がその本命の誕生日デートだったんです。随分甘やかされていますね。

 

待ち合わせの駅だけ指定されて、何をするのかわからずわくわくしたまま会った時。目的地に向かう道すがらでサプライズの内容を言い当てて喜び抱きついた瞬間。内装の美しさにきゃっきゃしながら。Happy Birthdayと書かれたハイティースタンドが出てきたタイミング。それらを食べながら何杯も紅茶を飲んでいる間。話している最中。

その全てでずっとずっと彼が私を見ているのを感じて、恥ずかしさに照れながら、緊張に戸惑いながら、愛おしさで息が止まりそうでした。

普段のデートではもっと彼の視線の先にあるものを、私も一緒に隣で見ます。可愛い椅子とか、変な像とか、美しい布とか、輝く酒と食べ物とか。彼の目が見ているものを同時に私も見ていることがとても嬉しかったし、自身の容姿に対するコンプレックスも相まり、正面にいることよりも隣にいることをどちらかと言えば好みました。

でも、今日のデートの間、私は終始嬉しくて楽しくてにこにこしてしまって、そんな私を彼はハイティースタンド越しに真正面から見ていました。彼の目の先にあるものを見つめたいのに、それが私なのでは一体どうしたものかと参っていたのです。参りつつも、彼に安心しきっているのでずっとにこにこしているのですけれど。

 

靴の裏側に綿毛の山でもあるのかと思う程ふわふわした足取りと心でデートを終え、帰宅すると彼から冒頭の写真が送られてきました。自分が普段鏡で見ている姿よりも、ずっと晴れやかで、幼くて、淑やかで、元気で、幸せそうだと感じます。まるで違う人みたいだ。

しかし私が鏡で見ている私はあくまで結ばれた虚像であり、彼が見ている私の実体を写したものがこの写真であることを考えれば、どちらが真実により近いのかは明白に思われました。今後、彼が私を見ている間、自分が洗面所の鏡の中のような酷い顔をしているのではないかと不安になるよりも、彼の目が見ている私を信じてもっと堂々と笑顔でいる方がどんなにいいか。

部屋の六方を囲む鏡をぶち割り、一人の世界を脱した先で、他者の目を信じようと思わせてくれた彼の愛には、魔法の鏡も微笑むしかないでしょう。