utteringUFOの日記

私とあなたの備忘録です

24卒・精神障害者の建築大学院生がIT企業から内定をもらうまで。

タイトルの通り、私は精神障害者手帳を持つ、建築を専攻する大学院生1年で、先日IT企業から内定をいただき就活を終えました。全く同じという人はなかなかいないとは思いますが、似たところがある人に参考にしてほしくて、この記事を書きます。

私のスペック

私の大まかなスペック(嫌な言い方ですが)を書いておきます。

精神障害者手帳2級
・疾患は統合失調感情障害/ナルコレプシー症候群/ASD
・1年浪人して都内の中堅私立理系大学の建築学科へ。
・内部進学でそのまま同大学院の建築専攻へ。
・研究室はデザイン理論・美学。
・首都圏の実家住み。

有名大学でもないし、特別なコンテストに出て優勝したこともないし、精神疾患というハンデを抱えています。。コンプレックスだらけですが、学部ではそれなりに成績優秀で大学院へは特待生として招待されたり、卒業制作で学内で表彰されたりはしました。しかし、あくまでその程度でしかなく、就活市場においてあまり雇いたいと思われる条件ではありませんでした。
精神疾患の症状としては、幻覚・幻聴、躁鬱の繰り返し、聴覚過敏とそれに伴う疲労、一日12時間以上の睡眠過多、過食嘔吐の繰り返しといったところが主です。学部をストレートで卒業できる程度ではありましたが、大学院に入ってリズムが変わると丸々2ヶ月休んだりもしました。何より、夕方になると発狂したりするので周りに迷惑をかけるし、聴覚過敏により居られる場所に制限があることが問題でした。

希望と結果

そんな私が就活をするにあたって、自分に出した希望は以下の通りです。

・デザイナーやプランナーなどデザインに関わる者として働けること
・恋人が関西で働いていて同棲したいため、勤務地が関西であること。
・体力がないため、月残業時間が平均20時間以下であること。
・土日祝休みで、産休・育休・時短勤務に理解があるところ。
・月給が額面で22万以上であること(20万+院卒ボーナスで2万)。
・服装(服や髪色やネイル)や勤務の仕方に細かく指定がないところ。
・障害者配慮があること。

障害者配慮を除いても、こんな条件に当てはまる企業がまず少ないです。営業職や事務職に比べてデザイナーや企画職自体が募集人数が少ないから。加えて、デザインに携わるところは激務であることが多く、より良いものを作るためなら仕方ないと免罪符になっている業界でもあります(よくないね)。また、大企業の場合はデザインセンターを東京に置いているところが多く、デザイナー希望であれば東京勤務という提示が多かったため、関西でデザイナー職を目指すこと自体が難しかったです。

それでも、いくつかは当てはまる企業があり(残業時間に関しては低く見積もってる会社もあるかもしれないけれど)、5社エントリーした結果、1社から先日内定をいただけました。IT系の大阪本社の企業で、デザイナーとして内定がいただけましたし、何より障害者であることも受け入れていただけました。
時期としては早期内定でしたが、自分の提示していた条件に適っていたことと、障害についてとても丁寧に対応してサポートしてくださって、ここで働きたいと思いました。また、就活が終わった方が精神疾患も軽くなるのは見込めていたため、一刻も早く終わりたかったのも本音です。

スケジュール

そもそも私は就活を始めた時に何をどうすればいいかわからなくて、わからないことそれ自体が一番不安でした。精神障害者の就活としてすべきことを明確にするためにも、スケジュール感がわからない不安を解消するためにも、過程を書いておきます。(あくまで24卒の話なので、以降はスケジュール感が変わる可能性もあります。)人によっては、当たり前じゃんと思う内容もあるかもしれませんが、私はその当たり前もわからなく困ったので書きますね。

2022年春から8月まで
ずっと精神の調子が悪く就活どころではなかったため、夏インターンなどにも参加できず、夏休みはずっと恋人の家で療養していました。

2022年9月上旬
マイナビリクナビへの登録
・ディスプレイ業界大手に勤めている方3人(母の過去の仕事仲間と、私の学部時代の友人)と実際に会って、業界や企業について話を伺う
・自己分析と就活の軸作り

2022年9月下旬
・大学の就活面談(11月まで利用)の利用開始
・ES対策説明会や業界別説明会
・企業のマイページへの登録
結局企業ごとの早期選考のお知らせなどは、採用ページからプレエントリーしておかないと届かなかったりするので重要です。実際、私はマイナビリクナビは企業探し程度でしか使わず、実際の就活を進める中では希望する企業の採用ページから登録しましょう。そこから企業に関する情報や動画を見たり、秋冬のインターンに申し込んだりしました。

2022年10月
・Web合説への参加
・SPI対策
・ES対策
・dudaチャレンジからの紹介を頼む
type就活というサイトからWebの合説に申し込みまくって、週末は大体それを見ていました。企業ってこんな感じかとか、知らない企業を知れたりとかして有意義でした。障害者向けや理系向けなど、かなり細かく分類して存在してるので、自分に合ったWeb合説を見るといいです。
また、10月後半からは冬インターンの選考が始まり、SPI受験やESを書く必要や面接に行く可能性が出てきたので、SPI対策本とES・面接対策本を買いました。SPIは2周くらいサラッとやって、マイナビの模試を受ける程度でした。
それよりもES対策や面接でのNGなど、常識性を問われる方が怖かったのでよく読み込んでいました。ASDならではのでのやらかしが私個人としては体感であるので、自覚がある人はこちらを重視しましょう。
ESに関しては、引き続き受けていた就活面談に書いて持っていき、詳しく添削してもらっていました。自分はわかっていることでも、他者の視点から見ると話の通じないこともよくあるので、私のことを知らない人に見てもらうのは非常にためになりました。

2022年11月
・冬インターンへのエントリー(SPI・ ES・面接)
・OBOG訪問(2社ほど行きましたが、あまりピンと来ず私としてはあまり役に立ちませんでした。訪問する企業をしっかり調べてから行くといいと思います。)
・大学主催の対面グループディスカッション対策
・大学主催の対面模擬面接
・気になっていた企業に直接訪問(小さな出版社の代表とご縁があってお話しました。)
ここでやっとスーツが必要になりました。私はリクルートスーツのデザインが嫌いだったので、母の昔のスーツを借りて挑みましたが問題ありませんでした。ストッキングが苦手なASDの方は多いと思うのですが、私もつらかったので直前に駅で履いて終わったらすぐに脱いでいました。面接の間だけ耐えられれば問題ありません。

2022年12月
・5daysの冬インターン(1社)
・企業主催の説明会参加(3社)
ポートフォリオ作り
デザイナー志望なので、今まで作った作品をまとめ直したり修正したり、別件で作ったポートフォリオを編集したりして、数パターンのポートフォリオを作りました。

2023年1月
・ES等のエントリー
ポートフォリオのブラッシュアップ
1月は大学が忙しくあまり動けませんでしたが、ESとポートフォリオのブラッシュアップは重ねて、何社か出していました。

2023年2月
・冬インターンに行った会社からの面接
・IT企業へのエントリーと面接
この月は面接の月だったので、やきもきしたり胃が痛くなったりして、メンタルと体調の管理が大変でした。精神疾患のある人は事前にカウンセリングなどを予約しておくとスムーズでしょう。

2023年3月
・冬インターンの会社の最終面接結果が来て、落ちたことがわかりました(明らかに障害者を差別した発言を最終面接で言われてしまっていたので、それが原因だと思いかなり落ち込みました)。
・3月上旬に最終面接を受けた会社から、内定をいただいた電話で障害を打ち明けました。確認してからまた正式に内定を出すとのことで、翌日何の問題もないということで丁寧な配慮・対応についてやりとりをし、内定をいただきました。就活終了です。

なぜ建築学生なのに建築ではないのか

そもそも建築を5年間(卒業時には6年間)学んでいる学生なのに、どうして建築業界以外へ行ったかということも説明しておきたいです。学部卒で就活するならまだしも、院進してまで建築の、しかもデザインや設計を学んでいる人が、建築に関わらない仕事に就いているのを見たことがありません。日本中を探せばいるとは思いますが、私の先輩方や私の研究室卒業者にはいませんでした。それくらい専門的な学科であることは確かで、私も大学院に入学するまではアトリエ設計者になる気満々でした。

しかし大学院に入って1ヶ月ほど建築を真剣にやる中で、メンタルの調子を今までで一番崩して数ヶ月ダウンしました。回復はしましたが、それと同時に建築を生業にするには精神的にも体力的にも力が足りないことを悟りました。
また、これはエージェントの方にもカウンセラーにも言われたことですが、入社することがゴールではないと言われていました。最低でも3年働き続けることができないのに、無理して繕って入社してしまった場合、辛くなってしまうのは私だと。

また、建築業界と言われるところで勉強したりバイトしたりする中で、業界全体にブラックな風土が強く根付いてしまっていることだったり、男性が多いことからか女性差別をしているなと感じるシーンが多々あり、この環境に身を置いていると蝕まれていくのも感じました。

上記のような理由から、建築業界(ゼネコン・組織設計事務所・アトリエ事務所など)での就活を諦め、デザインに少しでも関われる他業界を見ることとなりました。

就活を始めた頃は建築に近いところでデザインをしたかったことと、展示が大好きだったことから、ディスプレイ業界を特に拝見していました。ディスプレイ業界大手に勤めている方と実際に会って、業界や企業について話を伺う機会も得ました。大変貴重で有意義でしたが、深夜作業があったり、激務であったりして、私の体には向いてないことは明らかで、他の業界を探し始めました。

その結果、私がエントリーした企業はIT企業と印刷会社とゲーム会社のデザイナー・プランナー職となりました。最終的にIT企業でUI/UXデザインを行うことに決まったのですが、残念ながら私には未経験の領域でした。それでも学習環境を整えて歓迎してくださるとのことで内定をいただけたので、建築学生だけれども他業界に行きたい人は臆せずトライしてみましょう。案外、大丈夫です。

必須なツール・サイトまとめ

  1. Notion

    Notion (ノーション) – Wiki、ドキュメント、プロジェクト。すべてをひとつに。

    普段からNotionというアプリのユーザーではあるのですが、就活のページをきちんと作りました。①掲げている目標や希望(見失わないように)・②自分がよく行く就活サイトのリンクリスト・③企業リスト(企業名/業界/選考段階/締切/マイページのURLなどの表 )を作ってまとめていました。
    自分が今何をすべきかとか、迷った時に一目瞭然であるべきところに帰って来られる場所なので、Notionでなくてもこうしたものを作っておくと便利です。
  2. SPI対策本とES・面接対策本
    特にどれがいいとかはないので、書店に行ってきちんと手に取って見て、自分が良さそうだと判断したものを一冊ずつ使ってください。 その年度の時流もわかりますし、最低限のお作法が書いてあるので、ES添削を受けられない人でもこれに倣えば大丈夫です。SPIは最低1周はやろうと言われました。
  3. マイナビリクナビ
    私は主に企業探しのために利用しており、ここからエントリーした会社はありませんでした。自己分析のための診断ツールやSPI模試などが揃っていて、就活の始めの方でかなり役立つと思います。登録しておいて損はないです。
  4. type就活

    type就活 | 就職の本質を考えるキャリア研究サイト

    Webでの合説が多く行われていて、あの企業ってこんな感じのことやってるんだとか、待遇をちゃんと説明してもらえたりとか、人事の方の雰囲気の比較ができたりとかで便利でした。
    マイナビなど主催の現地での合説もいいのでしょうが、私のように人混みやうるさいところが苦手な人はWebの合説の方が向いていると思います。大抵は顔出しなしなので、パジャマで寝っ転がって見れるのも体調的にグッドでした。
  5. dodaチャレンジ

    障害者雇用の求人・就職・転職支援サービスはdodaチャレンジ
    これは障害者雇用専門の就活サイトです。私は最終的に一般枠で障害者配慮をしていただけることになりましたが、障害者枠での採用というのも大手になればなるほどあるので、検討してみてください。こちらは自分で検索するデータベースの他に、エージェントも用意されています。
    私は勤務地とデザイナー職、残業が少ない正社員を条件にエージェントの方に探していただきましたが、残念ながら適応するものはありませんでした。事務職などはたくさん求人があったので、障害者の方でそちらの方面を探している人には有効だと思います。
    エージェントの方とは電話でやりとりするのですが、障害者雇用の仕組みや、求める配慮の伝え方など基礎的で重要なことを教えていただけたので、仕事が見つからなくても私にとっては大切なやりとりでした。

  6. 就活相談室
    大学の就活支援センターなどに就活相談室や就活面談があると思います。飛び込みで行けるものもあれば、ネットで予約するものもあると思うので、自分の大学サイトをよく読んでみてください。
    私の場合は、かなり親身になって30分から1時間ほど一対一で相談に乗ってくれました。もちろん障害者であることも相談しましたし、どの業界が向いてるか、そもそもどんな業界が存在してるのかなど、幅広く対応してくれます。自分を知らない人として、人事の視点でESを添削していただけるのもありがたく、私は秋頃に週1で通っていました。

就活をするにあたって

先程も書きましたが、就活は入社して終わりではありません。むしろそこからがスタートです。長く働き続けることが目的ではありませんし、転職も当たり前の時代ですが、ファーストキャリアが自分にとって過ごしやすく、学びやすく、働きやすい環境であることは本当に大事です。
何番煎じかという話ですが、そのためには自分と企業群をいかに分析してマッチングしていけるかという話にもなります。障害を持っていると、多くの一般の人と違うことが多いので、自分を分析する要素が増えますし、説明すべきことも増えます。大事なのは、自分で自分を把握して、他者に説明し、共に働けるのだということをこちらが示す必要があります。障害というつらい部分に向き合うので、とても大変ですり減ることですが、ここを乗り越えなければならないのは確かです。

実際に、内定をいただいた企業からの最終面接のフィードバックで、「自己理解がよくできていて、困難にあった時にどのように乗り越えたかがよくわかったことが信頼に繋がった」という趣旨のことを伝えていただきました。
これは過ぎた言葉ですが、実際に自己分析や障害や特性や欲望と向き合うことにはかなり時間を費やしたので、とても嬉しい言葉でした。

内定をいただいたから思えることかもしれませんが、落ちた企業も含めて、半年程のこの就活で様々なものを得て、成長できたと胸を張って言えます。不安になってしまった夜も、憂鬱な朝も、全てを含めて自己鍛錬の半年になりました。

障害を持った方、他業界に行こうとしている建築学生などあらゆる就活生が、このブログを少しでも参考にして、自分に納得できる就活ができることを祈っています。